8.治療 発生から4日目 11月6日(土) バンブーのいる部屋に時計は無い。はっきりとした時間が判らない。しかし、手元には高機能電話 i Phoneがある。通話や、SMSは当然ながら翻訳辞書、国語辞典、その他様々な機能を入れることにより、頼れる相棒としていつもそばにある。今回のヤマも、奴の手助けが必要だ。特にチェコ語の単語表を入れており、これが最も役立つだろう。
バンブーは今朝も同様に朝5時に起こされる。体をふき、顔を洗い、歯を磨きベッドに戻るころには、戸棚に新しい点滴のボトルを並べられている。点滴注射用のチューブに点滴を3本つなぐと、ナースは有無を言わせず、点滴を血管に送り込む。
その点滴の落ちる速さは、点滴と言うには余りに早く、350mlであれば5分程度で終わってしまう。一日であれだけの点滴の量を終わらせるためには、当然であるのだろうが、完全にやっつけ仕事だ。
ナースが退屈だろうから、テレビをつけようかと聞いてくる。今までに何度か聞かれたが、見たくもなかったので、つけてもらわなかった。
しかし、今日はちょっと気分がいいのでスイッチを入れてもらうことにした。高い位置についている小さなテレビなので、リモコンで操作すると思っていたが、ナースは手を伸ばし、スイッチを入れ、チャンネルを切り替える。音楽番組にしてもらったが、音量が大きい。身振り手振りと、少ないチェコ語のフレーズで音量を下げてもらった。
8時過ぎであろうか、男性のドクターがやって来た。患部を軽く押さえながら英語で「ペイン?」痛いか?と聞く。今は腸をねじられるような痛みは全くなく、手術部の傷が少し痛むだけである。
バンブーは「A little pain for after operation ,other no problem, No pain」と答えた。普通に「手術跡が少し痛いけど、ほかは大丈夫です」そう言いたかった。
医師は、軽くうなずくと早々に去って行った。その入れ替わりにナースが一本の注射を持ってきた。何も言わず、その注射を左足の太ももに差し、一気に流し込む。すぐに下半身に温かい感触が広がった。痛み止めである。
コミュニケーションは大事である。日本人は「大丈夫」という意味で説明したつもりだが、医師は「痛い」という意味でとっているのである。
このコミュニケーションが判らず、何本も痛み止めを打たれたのである。
動けない状態での一日はとてつもなく長いi Phoneの時計を見ても時間が流れていない。仕事の1時間と、ここでの1時間は何倍もの差があると感じていた。
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